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2020.06.01
お役立ち情報
子どもとメディアについて
『子どもとメディア』
特に「2歳児未満の乳幼児とメディアの関係性」について、近年、電子映像メディアの急速な発展・普及がみられる一方で、乳幼児の発達に与える影響を危惧する声も増えてきています。
(*電子映像メディア:テレビ、ビデオ、DVD、携帯ゲーム、インターネット、スマートフォン、タブレット 等々)
これから成長していく途上にある子どもにとって、それらに囲まれて育つことが「人間としての原点を見失うではないか?」という危惧は、多くの保育関係者や子ども関係者のNPO、教育関係者や学者・研究者から発信されています。
WHOガイドラインや米国小児科学会においては、
「2歳児未満の乳幼児にはメディアは必要ない」ということも提唱されています。
今回はこういった背景にどのような問題点があるのか。
「乳幼児期の発達課題からみるメディアの影響」や「メディアとの関わり方」について、
乳幼児メディアアドバイザーの私から、少し情報発信をしたいと思います。
*この記事は「NPO法人 子どもとメディア 乳幼児メディアアドバイザー講座」の講義内容に基づいて作成しています*
「子どもとメディア」
まず、社会的背景として、繰り返しになりますが、昨今、スマホをはじめとした電子映像メディアは急速な発展・普及をしています。現代はスマホ社会といっても過言ではありません。
スマホの所有率は過去最高値であり、小学生で5割、中学生で7割、高校生では9割といわれています。
手に入りやすさは最易、接触年齢は最低、普及率は過去最高、依存性は薬物並み、であるにも関わらず、その危険性の認知は最貧である状況です。
そして、スマホをはじめとしたソーシャルメディアの普及により、情報はグローバル化・パーソナル化され、関係性の分裂やジェネレーションギャップが生まれています。
昔はテレビやDVDは家でみるものであったのに対し、機器のポータブル化により、今ではいつでもどこでも、スマホ1つで簡単に閲覧できるようになりました。
操作方法も従来のボタン式からタッチパネル式が主流となり、乳幼児でも簡単に操作できるようになりました。
メディアの普及は我々の生活・意識を大きく変容させました。
10年前、今のようにみんなが当然のようにスマホアプリを使って簡単に連絡をしたり、スマホ歩きが問題となったり、「ながらスマホ」が罰則化されたり、こういった状況を誰が想像することができたでしょうか。
私自身、iPhoneは初版から使用していますが、当初は周囲に使用している人は全くおらず、友人達にかなり物珍しい目で見られていたような記憶があります。
とてもこのような未来が訪れることは、想像できませんでした。
しかしながら、こうしたスマホの普及や「メディア」問題は突然変異のようにいきなり起こった問題ではありません。スピード感はあるにせよ、徐々に形成され、我々の生活に浸透してきました。
このことを踏まえると、現代の一種の文化である、との側面もあります。
従って、「親世代がおかしい」という認識・考え方は捨てて、我々はこの「メディア」問題と向き合う必要があります。
乳幼児期の発達の話に移ります。
乳幼児期の発達に影響を与えて、発達を妨げるものとして「メディア」を捉える時、まずは「乳幼児期の発達課題」を理解し、それに対してメディアが与える影響を知る必要があります。
平たく言うと、その発達には何が必要か、ということを知り、各年齢・各段階においてメディアが及ぼす影響を考えなければいけない、ということです。
あくまでメディアはツールですので、それ事態に善も悪もありません。
その特性を知った上で、うまく向き合い、利用することが大切です。
中には、自閉症やADHDといった診断をされたメディア漬けの子どもや、言葉遅れなどで発達に偏りがある子どもから、1週間メディアを遮断することで、症状が好転するような事例も報告されています。
遮断してできた時間は、それを埋めるような豊かな遊びの体験を提供することも重要です。
「乳幼児期の発達」と「0歳児から5歳児までの発達課題」を下のスライドに示します。
乳幼児の発達は大きく4つあり、
特に ①脳の発達 ②情緒の発達 ③関係性の発達
これらは、目には見えませんが、2歳までが最重要であるといわれています。
「0歳児から5歳児までの発達課題」はあまり聞き慣れのない用語が並んでいると思います。
今回は0歳~2歳児の発達課題について、順を追って説明します。
ここでのポイントは、乳幼児期はこのような年齢毎の発達課題を、必要な体験や経験により会得していくことで、子どもの発育が促され、人格が形成されていくということです。
★0歳児の生活と発達課題:「基本的信頼感」★
0歳児の間の基本的な生活リズムは、不快なことがあれば泣き、お世話をしてもらう。快適になると眠る。そしてまた起きて、不快になる・・その繰り返しです。
「大切にされている自分体験」と「大切にしてくれている周りの体験」
この2つが表裏一体となって繰り返され、その体験を十分に感じることで、その子の一生を支える基盤としての「基本的信頼感」が育っていきます。
この体験を保障することが「発達保障」であり、逆にこの体験を剥奪・妨害する行為は「虐待」と呼ばれるものです。
★1歳児の生活と発達課題:「発見・感動・伝達・共感」★
1歳児は自分の足で歩き始め、手で掴みたいものを掴むなど、五感(視覚・聴覚・味覚・臭覚・触覚)で物事を確認する時期です。
発見したものを感動を持って受け取り、誰かにみてみて!と示します。それに共感してもらえると、さらに発見しよう!、と再び探索行動が活性化されます。
その繰り返しが1歳児の生活です。
当然ながら、この対象がメディアであれば共感は得られません。
その体験が不足すると、反応の乏しい子どもや、自分から何か行動しようという好奇心がない子どもになってしまう危険性があります。
★五感【視覚・聴覚・味覚・臭覚・触覚】について★
五感(視覚・聴覚・味覚・臭覚・触覚)などの感覚器は自らを心地よくさせるものを求め、それを繰り返し取り入れようとします。
しかしながら、こうした感覚の受容には一定の許容量があり、オーバーフローすると感覚遮断を生じます。
(※感覚遮断とは、外からの刺激を出来る限り少なく、あるいはなくしてしまうことにより、現実世界と切り離されたような状態のことを言います。)
感覚遮断の状態になると、思考が乱れたり、身体的な違和感を生じたりするようになります。
また、感覚に過剰な刺激が与えられた子どもは、感覚過敏の子どもと類似した症状に陥るとも言われています。
その中でも、テレビやDVDなどの「メディア」は、視覚刺激と聴覚刺激の「混合刺激物」です。
画面は常に動いて、光って、子供番組には効果音が多用されています。
我々は、このことが子供の発達に与える影響を考える必要があります。
また、「触覚」は他の感覚と違い感覚器が決まっていません。
他の感覚が身体の一部の感覚器によって感知するものに対して、触覚は身体全体に分布していると言えます。
さらに、他の感覚がキャッチなのに対して、触覚だけ「触覚防衛」という特徴を持っています。
(※触覚防衛:何かが触るとその反対側の筋肉が収縮することで、触ったものを避けようとするような特性)
つまり、子どもが触ることの心地よさや触れようとする行動は、後天的に学習されたものであるといえます。したがって、メディア漬けのために、こうした体験が不足すると「触覚防衛」のまま育つ子どもが増える危険性があります。
★2歳児の生活と発達課題:「前庭覚・固有受容覚」
2歳児は自分の身体のコントロールが可能になります。
身体を動かすことで様々な体験を獲得していく時期です。その時期では「前庭覚」・「固有受容覚」といわれる活動が重要です。
2歳児は、散歩に出れば凸凹したところにいきたがり、狭いところに潜り込もうとしたり、ゆらゆら揺れるものに乗っかろうとしたがります。
そういった一見危なっかしい行動が大好きですが、これは子ども自身が自分の発達にとって必要な動きを獲得しようとしていることである、と理解しておきましょう。
ここまで、0歳児から2歳児までの発育課題について順を追って説明しました。
乳幼児期にはこれらの発達課題があり、発育には相応の体験や経験が必要である、といった背景を踏まえ、
子どもの発育における「メディアの影響」や「メディアの必要性」を皆さんはどのように感じられたでしょうか。
冒頭でも述べましたが、
子どもとメディアの団体や、WHOガイドライン、米国小児科学会においては「2歳児未満はメディアに触れさせるべきではない」と言われています。
しかしながら、核家族も増えてきている昨今の家庭環境では、「メディア」に頼らないと家事が進まない、といった悩みを抱えている親御さんも大勢いることも、また事実です。
繰り返しになりますが、メディアはあくまでツールの一つです。
何が問題で、何に気をつけておく必要があるのか。「メディアがもつ問題点」を十分に理解した上で、メディアを活用し、メディアと向き合っていくことが大切である、ということです。
見せ方や見せるタイミング1つとっても、工夫できること多々あるかと思います。
例えば、タブレットで動画を視聴する際、親子が横になって一緒に観覧し、子どもの反応に親がしっかりと反応・共感してあげる、見せる時間を事前に親子で決めておく、などもその向き合い方の1つかもしれません。
これについては、正解はありません。家庭環境に応じて工夫方法も異なることでしょう。
ポイントは、子どもの発達課題に影響を与えないように配慮をすること、そして漠然とメディアに接触させるのではなく、親がしっかりと意識・認識をもって電子映像メディアを扱うこと。
この2点を外さずに、「メディア」とうまく付き合っていくことが重要です。
最後に、当社の研修会でも使用した仮想のquestion 4題を以下に挙げておきます。
お時間があるときに、今日記載した内容を踏まえて、一度考えてみてはいかがでしょうか。
今後も研修会などを行っていく中で、みなさまにとっても有益で共有すべき内容については、今回のように別途「お役立ち情報」として記事を投稿していきます。
また、興味のある内容や知りたい内容、実はこれどうなの?と日頃疑問に思われていることなどがありましたら、「会社問い合わせ」よりご質問いただければ、可能な範囲で記事として投稿させていただきます。
ぜひ、気軽にご投稿ください。
薬剤師 y.n.